元TechCrunch Japan編集長でビットコインの執筆活動を行う西村賢氏は20日、著名投資家レイ・ダリオ氏の「世界秩序崩壊」論考に対し、「ダリオの歴史観を延長するとビットコインに行き着く」とする長文分析をXに投稿した。
ダリオ氏は15日、ミュンヘン安全保障会議でメルツ独首相、マクロン仏大統領、ルビオ米国務長官が揃って「旧世界秩序は終わった」と宣言したことを受け、「世界秩序は公式に崩壊した」と投稿。フィアット通貨と債務サイクルの危険性を指摘した上でゴールド保有を推奨していた。西村氏はダリオ氏の診断には同意しつつも、処方箋が根本的に異なると主張する。
西村氏が最も強調したのは「希少性」の比較だ。ゴールドのストック・トゥ・フロー比率は約58で、現在の採掘ペースが続けば58年で流通量が2倍になる。2024年の世界金採掘量は過去最高の3,661トンに達しており、金価格上昇で採掘インセンティブが高まれば供給も増える構造的インフレ圧力が存在する。
対照的にビットコイン
BTCは2024年4月の半減期後にS2F比率が約120に上昇し、すでにゴールドの2倍希少な資産になった。発行上限2,100万枚は誰も変更できず、2026年2月時点で約1,988万枚(95%)が採掘済みだ。次の半減期は2028年頃で、S2F比率はさらに2倍になる。
さらに深刻なのは、中央銀行の金準備の実在性が十分に検証されていない点だと西村氏は指摘する。ドイツは世界第2位の金準備約3,350トンを保有するが、物理的には37%にあたる約1,236トンがいまだにニューヨーク連邦準備銀行の金庫に保管されている。2012年にドイツ会計検査院が監査を求めた際、当初フルアクセスを拒否された経緯がある。2013年から開始された300トンの返還計画では、返還された金塊の一部が預けた当時のバーではなく新たに鋳造されたものだったと報じられた。
世界金評議会の2025年調査では、回答した中央銀行の59%が自国内で金を保管していると回答しており、前年の41%から急増している。これは金準備の実在性への懸念が世界的に高まっている証左だという。
一方、ビットコインは誰でも自分のコンピューターでフルノードを動かして、全世界の残高と全取引履歴を独立に検証できる。西村氏自身もフルノードを稼働させており、「手元のSSDに17年間の全決済履歴が入っていて検証済み」と述べた。金塊の実在性を確認するにはニューヨーク連銀の金庫の扉を開けてもらうしかないが、ビットコインの実在性は誰でも自宅のラップトップで確認できるという構造的違いを強調した。
西村氏は、ビットコインが「インターネット以前のアーキテクチャ」である既存金融インフラと根本的に異なると論じた。
国際送金システムSWIFTは1973年設立のメッセージングネットワークで、実際の資金決済は各国の中央銀行決済システムに依存している。クレジットカード決済も消費者には即時に見えるが、実際に加盟店の銀行口座に資金が確定して着金するまでには通常1〜3営業日かかり、その後もチャージバックで取引が巻き戻されるリスクが残る。
ビットコインのベースレイヤーでは約10分ごとにブロックが生成され、6承認(おおむね1時間)程度を待てば、多額の国際送金でも実務上はほぼ覆らないレベルのファイナリティを得られる。
さらに重要なのは、その上に構築されるライトニングネットワークのようなレイヤー2だ。支払い自体は数秒で即時に完了しつつ、チャネルの最終精算はビットコインのベースレイヤーの確率的ファイナリティに依存する。この構造はインターネットプロトコルのレイヤーモデルと同じ設計思想で、ベースレイヤーの堅牢性と上位レイヤーの柔軟性・即時性を両立している。
「ユーザー体験としては即時決済だが、最終的な清算はビットコインのベースレイヤーで行われる」──この構造こそが、ビットコインを真の意味で「ネットネイティブなマネー」にしていると西村氏は強調した。Google元会長エリック・シュミット氏の有名な言葉「Don’t bet against the Internet.」を引用し、「ネットネイティブなビットコインに逆張りするのは賢明なのだろうか」と問いかけた。
ビットコインに対する「犯罪に使われる」「匿名だから規制できない」という批判は、現実とほぼ逆だと西村氏は反論する。
ビットコインの全取引は世界中の誰もが閲覧できる公開台帳に永久に記録される。匿名ではなく「仮名」で、取引のパターン、金額、タイミングはすべて公開されており、一度アドレスと個人が紐づけば過去のすべての取引履歴が遡って可視化される。ブロックチェーン分析企業Chainalysisは法執行機関と協力し、これまでに126億ドル以上の不正な暗号資産の押収を支援してきた。2021年には、コロニアル・パイプラインへのランサムウェア攻撃で支払われた身代金440万ドルをFBIがビットコインのブロックチェーン上で追跡し回収に成功している。暗号資産全体の取引に占める不正取引の割合は1%未満だ。
対照的に、現金は一度手渡されれば追跡は事実上不可能であり、国連薬物犯罪事務所の推計では世界のマネーロンダリング規模は年間8,000億〜2兆ドル(世界GDPの2〜5%)に相当し、その大部分は現金と伝統的銀行システムを通じて行われている。ゴールドも物理的な金塊は一度溶かして再鋳造されれば出所の追跡は不可能だ。
西村氏は、ビットコインが「完全に匿名」でも「完全に透明」でもない中間に位置していることは、サトシ・ナカモトの論文第10セクションで明確に議論された設計思想だと指摘した。個人のプライバシーを保護するには十分な仮名性がありつつ、犯罪組織の資金の流れを追跡するには十分な透明性がある──この「ちょうどいい透明性」こそが、現金やゴールドにはない特長だという。
量子コンピュータのリスクについて、西村氏は状況がかなり動いていると説明した。米国立標準技術研究所(NIST)は2024年8月に格子暗号ベースの耐量子暗号標準を3つ正式に公開済みで、2025年3月にはバックアップのHQCアルゴリズムも選定された。Bitcoin CoreコミュニティでもBIP-360(量子耐性アドレス提案)が公式リポジトリにマージされ、NISTが標準化したML-DSAやSLH-DSAといったアルゴリズムの採用が具体的に検討されている。
「これはビットコイン固有の問題ではなく、ドルも既存の銀行システムも含むあらゆるデジタルインフラに共通するリスクだ」と西村氏は指摘する。オープンなプロトコルの本質的な強みは、こういう脅威に対して技術的に適応し続けられることだとした。
国家による攻撃耐性についても実証済みだという。中国は2021年にマイニングの全面禁止を実施し、当時世界のハッシュレートの大半を中国が占めていたが、結果はハッシュレートが数ヶ月で完全に回復し、マイニングの地理的分散はむしろ進んだ。国家による最も強力な全面攻撃が、ネットワークのレジリエンスを実証する実験になったわけだ。ビットコインは稼働開始から17年間、一度もクラックされたことがなく、一度も止まることなく稼働し続けており、累計可用性99.98%を維持している。
西村氏は、ビットコインが経済思想の延長線上にあると論じた。
ハイエクは『貨幣発行自由化論』で、通貨発行を国家独占から解放すべきだと論じた。フリードマンは繰り返し「インフレの原因はたった一つ、政府による過剰な通貨発行だ」と言い、1929年の世界恐慌の原因ですらワシントン(政府・FRB)にあると指摘している。米ドルは過去100年間で購買力の96.9%を失った。
「通貨発行が過剰となればインフレだけでなく、中央銀行の債務危機、もしくは過大債務による信任失墜という形で通貨覇権が終焉へと向かう。これがダリオ氏の指摘だ」と西村氏は述べる。そしてビットコインの2,100万枚上限は、通貨の発行ルールを人間の意思決定から切り離したものであり、これこそが本質的な意味だと強調した。
西村氏は、ダリオ氏と「何が問題か」はほぼ同じ認識だと述べた上で、根本的な分岐点を明確にした。
「ダリオ氏のフレームワークでは、国家は定数で、技術は歴史サイクルの中の従属変数だ。統治の構造は技術が何を変えようと不変だと考えている」。しかし歴史的には、技術が国家のあり方を変えた事例はいくらでもある。500年前にグーテンベルクの印刷術が宗教改革を可能にし、ルターの95か条の論題は2週間でドイツ全土、数週間でヨーロッパ中へ広まった。印刷術はドイツ語の方言を統合して標準語の形成を促し、結果的に国民国家という概念の基盤を作った要因とも言える。
「技術は国やコミュニティー、社会制度のあり方を変える。インターネットが社会制度の変容を迫らないわけがない」と西村氏は論じる。ビットコインは通貨発行の独占に対する技術的チャレンジであり、国家は定数ではなく技術の変化によって動く動的変数だとした。
最後に西村氏は「ダリオ氏の歴史観を彼自身のロジックで真剣に延長すると、『力が支配する世界で、どの国にも属さない、力で奪えない資産』の価値が導出できるはずだ」と結論づけ、今後20年で1ビットコインが現在の1,000万円オーダーから10億円オーダーへ上昇する可能性があるとの見方を示した。
関連:ブルームバーグアナリスト「ビットコインの本質的価値は不変」

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