TOPIX(東証株価指数)と日本円の相関が2005年以来初めてプラスに転換したことで、日本市場が構造的な転換期を迎えているようだ。過去1年間で円は対米ドルで約1%上昇、TOPIXは38%急騰し、円高・株高の同時進行という歴史的パターンが出現した。
この現象は1982〜1990年(バブル期)の日本、1985〜1995年のドイツ、2000〜2008年の中国など、長期強気相場の初期段階で観測されてきた。日本銀行の金融政策正常化、企業の株主還元強化、海外投資家の資金流入が重なり、従来の「円安=株高」の方程式が崩れつつある。暗号資産市場にとっても、日本のマクロ経済の安定化はリスク資産全体への追い風となり、ビットコインやイーサリアムへの資金流入が加速する可能性がある。
金融市場分析で知られるThe Kobeissi Letterは16日、重要な市場データを公表した。TOPIXと日本円の相関が2005年以来初めて正の領域に転換し、両者が同時に上昇する異例の展開が続いているという内容だ。
具体的には、過去1年間で円は対米ドルで約1%上昇し、TOPIXは38%の大幅上昇を記録した。通常、日本市場では円安が輸出企業の収益を押し上げ株価を支える逆相関のパターンが支配的だったが、今回は円高と株高が並行して進む構造的変化が起きている。
TOPIXは2026年2月12日に連日で史上最高値を更新し、日経平均株価も初めて5万8000円台に到達するなど、日本株の勢いは衰えていない。一方、円相場は2026年2月中旬時点で1ドル=153円台前半で推移し、高市早苗首相の財政政策や日銀の金融政策正常化への期待が円買いを支えている。
この背景には、日銀による段階的な利上げがある。日銀は2025年12月19日の金融政策決定会合で政策金利を0.50%から0.75%へ引き上げ、1995年以来約30年ぶりの水準に到達した。
市場では、2026年9月の会合までに追加の0.25%利上げが実施され、政策金利が中立金利の下限とされる1.0%に到達するとのシナリオが既に織り込まれている。こうした金融政策正常化の進展が、円の対外価値上昇を支える重要な要因となっている。
今回の円・TOPIX正相関への転換は、単なる一時的な現象ではなく、長期的な資本流入と経済構造の転換を示唆している可能性が高い。歴史的に見ると、通貨高と株高の同時進行は「世俗的強気相場(secular bull market)」の初期段階で頻繁に観測されてきた。
The Kobeissi Letterが指摘する事例として、1982〜1990年の日本(バブル期)、1985〜1995年のドイツ、2000〜2008年の中国がある。これらの時期はいずれも、通貨の対外価値上昇と株式市場の長期上昇が並行し、海外からの本格的な資本流入と国内経済への信頼回復を伴っていた。
日本市場においても、コーポレートガバナンス改革、株主還元強化、TOPIX改革による流動性向上が進展し、海外投資家の買い越しが続いている。2026年1月の投資部門別売買動向によると、海外投資家は6921億円の買い越しを記録し、4カ月連続の買い越しとなった。事業法人も7442億円の買い越しで56カ月連続の買い越しを継続しており、自社株買いを含む企業の株主還元姿勢が強まっている。
2026年は日本株にとって過去35年で最高の滑り出しとなった。米国市場と比較した割安感や、海外投資家・個人投資家の旺盛な買い意欲が背景にある。ブルームバーグのデータによると、新年最初の2営業日のTOPIXと日経平均の上昇率は、東京証券取引所の週5日制が定着した1990年以降で最大となった。
従来の「円安依存型」の成長モデルから、「円高でも株価が支えられる」体質への転換が進んでいると解釈できる。これは、日本企業の収益構造が内需と海外直接投資へシフトし、単純な為替感応度が低下していることを示している。
日銀の金融政策正常化は、今回の市場構造転換において中核的な役割を果たしている。2025年12月の政策決定会合で公表された「主な意見」では、政策委員のほぼ全員が追加利上げに前向きな姿勢を示しており、唯一慎重なトーンの発言は1件のみだった。
日銀は、高水準な企業収益や良好な業況感による設備投資の増加、雇用・所得環境の改善による個人消費の底堅さを指摘している。2026年春の春闘に向けた賃上げモメンタムについても、労働需給の引き締まりと高水準の企業収益を背景に、2025年に続くしっかりとした賃上げが実施される可能性が高いとの見方を示した。
ただし、利上げペースについては慎重な姿勢も見られる。植田総裁は「今後の経済・物価情勢次第であり、毎回の金融政策決定会合において判断する」とデータ依存型の姿勢を強調した。政策金利が既に中立金利のゾーンに入った可能性にも配慮し、経済情勢を見極めつつ、以前よりも慎重に利上げを進める方針である。
専門家の間では、次回の利上げは2026年9月、さらに2027年6月に政策金利が1.25%まで引き上げられ、そこがターミナルレート(政策金利の到達点)になるとの予想が主流となっている。一方、高市政権は利上げによる経済への悪影響を懸念しており、政府と日銀の間には依然として緊張関係が存在する。
日本株の構造的な強気転換は、暗号資産市場にも重要な示唆を与える。日本は世界有数の暗号資産取引量を誇り、ビットコインやイーサリアムなどの価格動向に影響を与える存在である。
2026年は暗号資産が「投資インフラ」へと姿を変える転換期であり、日本国内では申告分離課税や暗号資産ETFの導入に向けた法整備が進展している。日本市場のマクロ経済が安定化し、リスク資産全体への資金流入が加速すれば、暗号資産にもポジティブな影響が及ぶ可能性が高い。
特に、円高が進む中で海外投資家が日本の伝統的金融資産だけでなく、暗号資産にも資金を振り向けるシナリオは現実味を帯びている。2026年1月末時点でビットコインは約8万8000〜8万9000ドルで推移し、1月には一時的な調整局面を経験したが、日本を含む各国の規制整備の進展が中長期的な成長を支える要因となっている。
日本の暗号資産市場では、機関投資家の参入が本格化する兆しも見られる。従来は個人投資家が中心だった市場構造が、法整備の進展とともに機関投資家向けのインフラが整いつつある。これは、日本株市場において海外機関投資家の存在感が高まった経緯と類似しており、暗号資産市場の成熟化を示す重要なシグナルである。
ただし、この相関転換が持続するかは今後の経済指標、特に成長率、インフレ率、日銀の政策スタンスに左右される。2026年前半は米国の成長率鈍化やFRBの利下げ期待の高まりにより、ドル安・円高リスクが高まる可能性がある。この点も踏まえると、日銀の追加利上げは2026年後半になる可能性が高い。
短期的な調整リスクは残るものの、歴史的パターンから見れば、日本市場は新たな長期上昇フェーズに入る可能性を秘めている。投資家は、日本株・為替・暗号資産の連動性を意識したポジション構築が求められる局面である。特に、円高局面でも堅調な日本株と、規制整備が進む暗号資産市場の両方にバランス良く資金を配分する戦略が、リスク分散の観点から重要性を増している。


