暗号資産(仮想通貨)をチャージしてVisaやMastercard加盟店で買い物ができる「暗号資産デビットカード」。非常に便利ですが、「使うたびに税金の計算が発生する」という落とし穴をご存知でしょうか?
今回は、デビットカード利用時の税務処理について徹底解説します。
暗号資産デビットカードとは、暗号資産(ビットコイン、イーサリアム等)を決済原資として、VisaやMastercardなど既存のカードネットワークで支払いができるカードを指します。
多くのサービスでは、ウォレット入金時また決済時に暗号資産が法定通貨へ換金され、その法定通貨で加盟店決済が行われる仕組みです。
仕組み(決済フロー)
重要点
暗号資産デビットカードは、外形的にはカード決済ですが、税務上は暗号資産の交換・決済による暗号資産の売買損益および外貨決済による為替差損益が複合的に発生し得る取引です。そのため、どのタイミングで暗号資産が法定通貨や決済残高と交換されるかが税金計算上、重要になってきます。
暗号資産デビットカードの利用において、課税イベントの発生が問題となるのは、主に次の3つのタイミングです。
これらすべてのタイミングで必ず課税されるわけではなく、各カード・サービスの仕組みによって課税関係が異なります。
そのため、利用するサービスのマニュアル等を確認したうえで、個別判断が必要になります。
① 暗号資産が入金時に法定通貨へ交換される場合
暗号資産をサービスに入金した時点で、その暗号資産がUSD等の法定通貨に交換される仕組みの場合、入金という名称であっても、実態として暗号資産の交換・売却が行われているため、入金時点で暗号資産の譲渡が成立します。
この場合、次の金額が暗号資産に関する損益として計上されます。
入金時の暗号資産の時価 - 取得価額=暗号資産に関する損益
② 交換後の外貨でデビット決済した場合の為替差損益
交換後のUSD等を用いてデビットカードで支払いを行った場合、入金時の為替レートによる円換算額と、支払時の為替レートによる円換算額との差額は、為替差損益(雑所得)として計上されます。
外貨建資産については、決済時に為替差損益を認識します。
③ 購入物が暗号資産所得の取得に資する場合
購入したモノ・サービスが、暗号資産所得の取得に直接資するものである場合には、
②の支払時点の円換算額を必要経費として雑所得から控除できます。
一方、暗号資産所得の取得に資さない私的支出については、経費計上はできません。
事例:取得価額14万円の1,000USDCを時価13万円のときにXapobankに入金し、その際に1,000USD(時価15万円)に変換された。その直後、デビットカードを用い1,000USD(1ドル150円)を支払って、15万円の暗号資産取引専用のスマートフォンを購入した。
入金時:13万円(入金時時価)-14万円(取得価額)= △1万円(暗号資産売買による損失)
決済時:15万円(スマートフォン対価=決済時日本円換算額)-13万円(取得価額)=2万円(為替差益)
この場合、暗号資産による所得および為替差益はともに雑所得のため、損益通算が可能となります。そのため、所得は1万円となります。また、スマートフォンは暗号資産の売上に要する経費となるため、15万円が経費に入れられるのですが、10万円以上の器具備品は減価償却の対象となるため、一括減価償却資産(10万円以上20万円未満のものが対象。3年で償却する)として、この年には15万円÷3=5万円が経費計上可能になります。
よって、△1万円+2万円△5万円=△4万円が今年の所得額となります。この場合、損失が出ているので確定申告は原則不要です。
① 外部ウォレットからサービスウォレットへの移動
メタマスク等の外部ウォレットからサービス側のウォレットへ暗号資産を移動させただけの場合、所有権の移転や交換は発生していないため、この段階では課税イベントは発生しません。
② サービスウォレットからデビットカード残高への移動
一方で、サービスウォレットからデビットカード残高へ移動した時点で、暗号資産が法定通貨や決済用残高に交換される仕組みであれば、この時点で暗号資産の譲渡が成立し、課税イベントが発生します。それ以降の税務処理は、前述の「サービス入金時課税型」と同様です。
※ パターン①・②のいずれにおいても課税イベントが発生しなかった場合を想定しています。
① 暗号資産を用いてデビットカード決済を行った場合
モノ・サービスの購入時点で初めて暗号資産が決済に使用される場合、その時点で暗号資産の時価を日本円に換算し、取得価額との差額を雑所得として計上します。
支払時の暗号資産の時価(円) - 取得価額(円)
② 経費計上の可否
購入したモノ・サービスが暗号資産所得の取得に資するものであれば、支払時点の暗号資産の時価(円換算額)を必要経費として雑所得から控除できます。暗号資産所得の取得に資さない場合には、経費計上は行いません。
事例:取得価額14万円の1,000USDCを時価13万円のときにデビットカード会社に入金し、その際に法定通貨などに変換されなかった。その直後、デビットカードを用い1,000USDC(時価)を支払って、15万円のプライベート用のスマートフォンを購入した。
決済時:15万円(スマートフォン対価=決済時日本円換算額)-14万円(取得価額)=1万円(暗号資産売買による利益)
この場合、暗号資産による所得および為替差益はともに雑所得のため、損益通算が可能となります。そのため、所得は1万円となります。また、スマートフォンは暗号資産の売上に要する経費として認められないため、経費計上しません。よって、1万円が今年の所得額となります。
暗号資産デビットカードにおける税務判断の本質は、「いつ暗号資産が法定通貨または決済用残高に変換されるのか」にあります。「入金」「チャージ」「支払い」といった名称だけで判断することはできず、各カード・サービスの実際の処理内容と利用規約を確認することが不可欠です。特に、少額・頻回の決済を行う場合には、記帳・申告漏れのリスクが高まる点に注意が必要です。
補足事項
各サービスの仕様は頻繁に変更されるため、同一のカードであっても時期や提供条件によって課税タイミングが異なる可能性があります。そのため、一般論ではなく、利用しているカードごとの実装ベースで税務判断を行う必要があります。


