2026年1月15日、米ブロックチェーン分析企業Chainalysis(チェイナリシス)は最新レポートを公開し、2025年のイラン国内における仮想通貨取引額が約78億ドル(約1.2兆円)規模に達したことを明らかにしました。
同社は、この取引規模が前年を上回るペースで拡大している背景として、国内で相次いだ政治的混乱や地域紛争といった不安定要因との連動を挙げています。
レポートによると、2025年末に発生した大規模な反政府抗議デモの期間中、国内の仮想通貨取引所から個人ウォレットへのビットコイン(BTC)送金が急増しました。
Chainalysisは、こうした状況を市民による資産防衛行動と位置づけ、国家管理下の金融システムから資産を切り離す動きが表面化したと指摘しています。
この動きの背景には、イラン通貨リヤルの急激な価値下落と深刻なインフレがあります。リヤルは2025年を通じて対ドルで実質的に半減し、同年12月時点のインフレ率は42.5%に達しました。
このような通貨環境の悪化が、市民の間で仮想通貨を代替的な価値保存手段として選好する動きを後押ししたとみられています。
Chainalysisはまた、イランのIRGC(イスラム革命防衛隊)と関連するウォレットが、2025年第4四半期時点で国内仮想通貨流通量のおよそ50%を占めると推計しました。
国家機関が仮想通貨エコシステムにおいて極めて大きな比重を占める現状は、制裁下にあるイラン経済において、デジタル資産が重要な資金循環手段として機能している実態を浮き彫りにしています。
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Chainalysisが公表したレポートでは、イランにおける仮想通貨利用の拡大が、国内政治の不安定化や地政学的緊張と結びついて進んでいると分析されています。
同レポートは、仮想通貨活動と主要な政治・軍事イベントとの相関や、IRGCによる仮想通貨領域への関与拡大、抗議デモ発生時におけるビットコインの資産退避手段としての役割という3つの観点に焦点を当てています。
Chainalysisは2024年以降、イラン国内のオンチェーン取引量が、主要な政治的・軍事的イベントの発生に合わせて顕著に増加していると報告しています。
具体的には、以下の出来事に伴い仮想通貨取引量が跳ね上がったと説明しています。
これらの局面では、軍事行動に加えて、イラン最大の仮想通貨取引所Nobitexや国営銀行Sepahが大規模なサイバー攻撃を受ける事態も発生しました。
Chainalysisは、こうした不安定要因が重なる局面で仮想通貨取引が急増している点を踏まえ、政治・軍事的緊張が資産行動に影響を及ぼしていると分析しています。
Chainalysisの分析によれば、イランにおける仮想通貨流通の半数近くはIRGC関連のアドレスによるものとされています。
実際、IRGC関連ウォレットがオンチェーン上で受け取った資金は、2024年に20億ドル超、2025年には30億ドル超に達しています。
これらの数値は、OFAC(米財務省外国資産管理局)やイスラエル当局によって制裁対象として特定されたウォレットに基づく下限推計であり、未特定の関連ネットワークを含めた実態はさらに大きい可能性があるとしています。
Chainalysisは、IRGCが従来から資金洗浄、密輸、武器調達などの活動に関与してきた点に触れつつ、仮想通貨が制裁回避や国際金融網の外での資金移動手段として利用されている実態を指摘しました。
石油取引の裏ルートや代理勢力への資金供与においても、デジタル資産が一定の役割を果たしているとされ、仮想通貨が資金移動手段の一部として用いられていることが示されています。
加えてChainalysisは、通貨危機下でのビットコイン利用について、2025年末以降の反政府デモの激化に伴い、市民によるビットコインのセルフカストディが急速に広がった点にも注目しています。
同社の比較分析では、抗議発生前と政府による全国的なインターネット遮断が行われた期間とを比べ、1日当たりの平均取引額および個人ウォレットへの送金件数が大幅に増加していることが明らかにされました。
特に、国内取引所から個人管理のBTCウォレットへの資金移動が増加しており、市民が自ら資産を管理する動きが確認されています。
Chainalysisは、リヤルの実質的な価値低下が進む中で、ビットコインへの資産退避が現実的な選択肢として取られたと分析しています。
また、こうした動きがイラン特有の現象ではなく、戦争や経済危機、政府による抑圧が存在する地域で共通して観測されるグローバルな傾向であるとも指摘しています。
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米Bitcoin Policy Instituteのブラッドリー・レットラー氏は「政府への不信や通貨下落が進む国では、ビットコインが代替的な価値保存手段として選ばれやすい」と述べています。
その上で同氏は、取引所から個人ウォレットへの資金移動が、プライベートな利用を維持する上で重要になると指摘しました。
この点について、Human Rights Foundation(ヒューマン・ライツ・ファウンデーション)のアレックス・グラッドスタイン氏も、ビットコインを権威主義体制下で金融の自由をもたらす存在との認識を示しています。
Chainalysisはレポートの総括として、イランにおける主要な政治・軍事イベントと仮想通貨活動の相関が、ブロックチェーン分析によって地政学的出来事の経済的影響を可視化できることを示していると述べています。
同時に、Chainalysisは仮想通貨が権威主義的経済体制下で市民の資産保全や資金移動を支える金融インフラとして機能しつつある現状を明らかにしました。
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イランで進行するビットコイン需要の拡大は、制裁や経済危機に直面する国家におけるデジタル資産活用の一例として位置づけられます。
実際、このような動きは他の制裁対象国でも確認されており、国家レベルで仮想通貨を活用する動きが徐々に表面化しています。
例えばロシアでは、2024年に国際決済における仮想通貨利用が合法化され、2025年にはルーブルに連動した独自トークンが発行されました。
同トークンを通じた取引額は、1年足らずで約930億ドル(約14.7兆円)相当に達したと報告されています。
また、英フィナンシャル・タイムズの報道によれば、イラン国防省傘下の輸出機関であるMindexは、軍事関連製品の輸出代金として仮想通貨決済を受け入れ始めています。
この動きは、仮想通貨を用いた制裁回避を国家が事実上認めた初の事例とされ、国際的な注目を集めました。
こうした国際情勢における動きは、各国政府および市民にとって仮想通貨が経済制約を乗り越える新たな金融インフラとなりつつある現状を示しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.20 円)
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Source:Chainalysisレポート
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