米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)のCEOであるブライアン・アームストロング(Brian Armstrong)氏が、米上院銀行委員会で審議予定の暗号資産市場構造法案について、支持を撤回した。同氏がXにてこの方針を1月15日に明らかにした。
アームストロング氏は、同法案が上院銀行委員会で審議される数時間前に、「過去48時間にわたり法案草案を精査した結果、コインベースは残念ながら現行案を支持できないとの結論に至った」とポストした。
同氏は同法案の問題点として、「トークン化株式の事実上の禁止」、「DeFiを実質的に制限し、政府による金融記録への無制限なアクセスを可能にすることでプライバシー権を侵害しかねない条項」、「商品先物取引委員会(CFTC)の権限を弱体化させ、証券取引委員会(SEC)の下位機関のような位置付けにする点」、「ステーブルコインにおける報酬制度を廃止し、銀行が競合を排除できるようにする修正案」などを挙げた。
アームストロング氏は、「この法案は現状よりも著しく悪化している。悪い法案なら、法案がない方がまだ良い」と述べ、「より良い草案にたどり着くことを願っている」とした。そのうえで「私たちは米国市民と経済的自由のために戦い続ける。暗号資産は他の金融サービスと同様に公平な扱いを受けるべきであり、それによって初めて米国で安全かつ信頼できる産業を構築できる」と強調した。
背景には、ステーブルコインを巡る銀行業界との対立がある。昨年7月にドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の下で成立した、ステーブルコインに焦点を当てた「ジーニアス法(GENIUS Act)」では、コインベースを含む暗号資産企業が、米ドルなどにペッグされたステーブルコインの保有者に対し、預かり資産に利回りを付与することが認められていた。
しかし、こうしたステーブルコインの報酬制度が銀行預金の流出を招くとして、銀行業界は強い懸念を示してきた。1月12日に公表された市場構造法案の改訂案では、第404条「ステーブルコイン保有者への報酬の維持(Preserving Rewards for Stablecoin Holders)」において、デジタル資産サービスプロバイダーが、決済用ステーブルコインの単純な保有に対して、現金やトークンなどいかなる形でも利回りや利息を支払うことを禁止すると規定されている。
これは、ここ数カ月にわたり地域銀行を中心に銀行業界が求めてきた主張を反映した内容とされる。米銀行業界団体のアメリカン・バンク・アソシエーション(ABA)は、ステーブルコインが利回りを提供した場合、最大6.6兆ドル規模の銀行預金が流出する可能性があると警告しており、これを根拠に規制強化を訴えてきた。
なおこの改訂案をめぐっては、上院銀行委員会に所属する民主党の上院議員のクリス・ヴァン・ホーレン(Chris Van Hollen)氏、ティナ・スミス(Tina Smith)氏、ジャック・リード(Jack Reed)氏の3名が、法案本文がマークアップの直前に提示される予定であることを問題視し、今週予定されているマークアップに先立って公聴会を開くよう求めていた。
またアームストロング氏は、支持撤回を表明する前日、コインベースと連携する政治監視団体「スタンド・ウィズ・クリプト(Stand With Crypto)」が、上院銀行委員会のマークアップにおいて各議員がどのように投票するかを厳しく監視する方針であることも投稿していた。
なおクリプト・イン・アメリカ(Crypto In America)のジャーナリストであるエレノア・テレット(Eleanor Terrett)氏によれば、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)、サークル(Circle)、クラーケン(Kraken)、デジタル・チェンバー(Digital Chamber)、リップル(Ripple)、コインセンター(Coin Center)などがこの法案の支持を表明しているという。
画像:Reuters


