●マクロ環境の緊張と予測市場で下振れリスクが織り込まれるなか、ビットコインマイナーは72時間で2億ドル超を売却した。
●2025年1月にビットコインが10万ドルに到達するとのKalshiでの賭けは22%低下し、日中の値動きが比較的落ち着いているにもかかわらず、弱気心理を示している。
●安全資産志向の取引により、金と銀はそれぞれ4600ドル超、84ドル超の新高値を記録。一方、ビットコインの上昇は9万3000ドルのレジスタンスを下回ったまま失速した。

アジア時間早朝に9万2400ドルまで上昇した後、ビットコインは米国市場が開いた12日、トランプ政権が連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を調査しているとの報道を受けて反落した。CoinMarketCapのデータによると、価格は一時9万212ドルまで下落した。

11日夜に発表された反論声明で、パウエル議長は、調査がトランプ大統領の利下げ要求を拒否したことへの報復であると述べた。FRBの独立性や米ドルの安定性に対する懸念が改めて高まった。

投資家は、米ドルエクスポージャーに対するリスクをヘッジする伝統的な安全資産へと資金を移し、ビットコインをいったん脇に置いたようだ。金は1オンス当たり4600ドルを超える新高値を記録し、銀も日中に約7%上昇して85ドル前後まで跳ね上がった。一方でビットコインは、リスク回避の資金フローが資産配分を組み替えるなか、重要な9万3000ドルの節目を突破できなかった。

予測市場Kalshi、トランプ–パウエル対立がビットコインの下振れリスクをもたらすことを示唆

米国の金融政策を巡る政治的圧力が強まるなか、予測市場ではビットコインの下振れリスクが徐々に織り込まれている。

Kalshiのデータによると、2026年2月までにビットコインが10万ドルを超えるとの賭けは12日に急落し、セッション序盤の42%から32%へと低下した。

この再評価は、金融政策への政治介入に対する懸念の高まりを背景としている。民主党のブレンダン・ボイル下院議員は、トランプ政権がジェローム・パウエルFRB議長に対する調査を開始したのは、同議長が大幅な利下げ要求を拒否したことへの報復だと主張している。

トランプ大統領は、2025年7月15日に以下のようにTruth Socialへの投稿している。

「FRBは3ポイント利下げすべきだ。インフレは非常に低い。年間で1兆ドルが節約できる!!!」

alt 〈ビットコインが2026年2月までに10万ドルを超えるとの賭けは、12日に42%から32%へと急低下した|Kalshi〉

安全資産志向のトレーダーが商品市場での上昇を引き起こし、金は1オンス当たり4600ドルを突破、銀は日中に約7%上昇して85ドルまで上昇した。一方で、投資家はビットコインを敬遠し、ドルを巡る不確実性が広がるなかでも9万3000ドルのレジスタンスゾーンを回復できなかった。

これは、投資家が現在、トランプ大統領の暗号資産市場との近さを短期的なリスク要因とみなしていることを示唆している。

ビットコインの現物価格が日中では比較的安定したレンジを維持しているにもかかわらず、予測市場で上昇確率が引き下げられていることは、ホワイトハウスからの最新情報を受け止めるなかで、1月中に10万ドルを回復するとの見通しに対する楽観論が弱まっていることを示している。

最近の安全資産志向の動きのなかで見られたビットコインマイナーの反応も、この見方を裏付けている。

ビットコインマイナー、3日間で2億ドル相当を売却──9万ドル割れリスクが浮上

オンチェーンデータによると、過去72時間でビットコインマイナーはビットコンン保有を積極的に縮小しており、短期的な供給リスクを高めている。

CryptoQuantのデータによれば、過去72時間でマイナーは約2226BTCを売却し、マイナー全体の保有残高は約108万3000BTCまで減少した。これは50日ぶりの低水準。現在の市場価格で換算すると、累計売却額は2億ドルを超える。

alt 〈ビットコインマイナーの保有残高は、1月8日から12日の間に2226BTC(2億1600万ドル)減少|CryptoQuant〉

マイナー保有残高データは、マイナーやマイニングプールに関連するウォレットの残高を追跡している。重要なマクロニュースが出た局面で、マイナーの保有残高が急減することは、リスク回避的な心理を反映している可能性があり、他の市場参加者にもビットコインに対する慎重姿勢を促しかねない。

alt 〈1月11日時点で、ビットコインの平均マイニングコストは1BTC当たり10万3241ドルまで上昇。一方、価格は9万2000ドル付近で頭打ち|MacroMicro〉

さらに掘り下げると、今回の売却のタイミングは、マイナーの収益性に対する圧力が強まっている局面と重なる。ケンブリッジ大学のデータを引用してMacroMicroは、1月11日時点でビットコインの平均マイニングコストが1BTC当たり10万3241ドルに達し、24時間で1.7%上昇したと報告している。一方、ビットコイン価格は9万2000ドル前後で推移しており、マイナーは損益分岐点を下回る水準で運営している。

電力コストの上昇に加え、ベネズエラの石油埋蔵量を巡る動きを受けた世界的なエネルギー市場の変動が、収益性をさらに圧迫している。同時に、米国の金融政策を巡る新たな政治的不確実性は、レバレッジに依存するマイナーにとって重要な資金調達環境を脅かしている。

ビットコインが9万3000ドルを下回ったままもみ合い、かつ生産コストが上昇し続ける場合、マイナーによる強制的な売却が続く可能性がある。投機的需要が弱まる局面で追加供給が市場に流入すれば、9万ドルという心理的節目を割り込むリスクが高まる。


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