米大手ベンチャーキャピタル(VC)のAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、通称a16z)は、複数のファンドで進めてきた資金調達を最終的に完了し、総額は150億ドルを超えた。共同創業者のBen Horowitz(ベン・ホロウィッツ)氏が1月9日、Xへの長文の投稿で明らかにした。1ドル=158円で換算すると2兆3700億円超。投稿によると、この金額は昨年、全米のVCが調達した金額の18%に相当するという。
調達金額自体も驚異的だが、より注目すべきは、同氏が「Why Are We Here? Why Did We Raise $15B?」と題した長文の投稿で語った、その思想、あるいは意志だ。
冒頭でホロウィッツ氏は次のように記している。
「a16zは、社会が個人のためにできる最良のことは、チャンスを与えることだと考えている」
さらに、こう続ける。
「貢献する機会、自分自身を超える何かに挑み、世界をより良くする機会を与えること。それ以上に社会ができることはない」
ベンチャー企業を支援するVCとして、極めてストレートな表現だ。そして同氏は強い自負をにじませながら、次のように断言した。
「人々により良い人生へのチャンスを、最も一貫して与えてきた国はアメリカ合衆国だ」
「だからこそ、技術的な可能性が極めて大きいこの瞬間において、人類にとって根本的に重要なのは、アメリカが勝つことだ」
「もしアメリカが技術競争で敗れれば、経済的にも、軍事的にも、地政学的にも、文化的にも敗北する。そして、その結果、世界全体が敗者になる」
シリコンバレーを代表するトップVCとして、年頭に自らのビジョンを表明したものと受け取れる。だが、年初に相次いだトランプ政権による強硬な外交・安全保障をめぐる動きや発言を背景に重ね合わせると、やや「強すぎる」と感じるかもしれない。
もし、トランプ大統領が西半球、つまり南北アメリカ大陸での覇権をより前面に押し出す戦略を取るとすれば、やや大袈裟かもしれないが、世界は再び、「ブロック経済圏」という悪夢を経験することになりかねない。
世界はこれまで、アメリカの圧倒的パワーを基盤に、少なくとも大国間の全面衝突が抑えられてきた状態、いわゆる「パックス・アメリカーナ」のもとにあったとも言える。それが今、アメリカへのパワーの “一極集中” から、より “分散型” の世界に移行しつつある──そう捉えることもできる。
だが今、私たちが目撃し始め、どこか得体の知れない不安を覚え始めているのは、分断され、サイロ化した「ブロック」が世界各地に生まれ、対立・衝突していく現実ではないだろうか。
暗号資産(仮想通貨)、ブロックチェーン、あるいはWeb3と呼ばれるものが目指す世界は、決して分断されたブロックの世界ではない。誰もが国境や時間を超えて、シームレスに、パーミッションレスに価値をやり取りできる世界を目指しているはずだ。
ホロウィッツ氏はさらに次のように続けている。
「米国を代表するベンチャーキャピタルとして、新技術の行方は、部分的ではあるが私たちの肩にかかっている。私たちの使命は、次の100年においてアメリカが技術競争に勝ち続けることを確実にすることだ」
この強烈な意思表明に対して、私たちは「次の100年」に向け、何ができるのだろうか。
奇しくも日本では、2026年は昭和元年(1926年)から数えて満100年にあたり、政府は「昭和100年」ポータルサイトを開設している。そこには、「多くの分野で平和を希求する道を歩み、揺れ動く世界情勢の中にあって、国際社会の安定と繁栄に貢献してきた。今後とも、この平和を希求する歩みを続けるとともに、歴史の教訓を次世代に継承していくことが必要である」と書かれている。
冷徹な国際情勢の前には、こうしたスタンス、さらにはブロックチェーン、Web3が描く世界は、楽観的に過ぎるのかもしれない。
ホロウィッツ氏の視線は明らかに強い。
次の100年、勝ち続けるための第一歩は「未来の中核となるアーキテクチャ──AIと暗号資産(クリプト)──で勝つことにある」と同氏は主張する。
「次に、それらの技術を、生物学、医療、防衛、公共安全、教育、エンターテインメントといった、人間の繁栄を生み出す主要分野に適用していく。そして最終的には、アメリカ政府がこれらの技術を採用し、アメリカの利益を守り、前進させることへと帰結する」
ここで見逃してはならないことは、ホロウィッツ氏がAIと暗号資産(クリプト)を「並列」に語っていることだ。
日本では、AIは大きな関心を集めている一方、暗号資産はいまだニッチな投資商品として捉えられがちだ。
しかしa16zにとって、そしておそらくアメリカ政府にとっても、AIと暗号資産は、いずれも「将来の競争力の源泉」として欠くことのできないものだ。だからこそ、ホロウィッツ氏は「人間の繁栄を生み出す主要分野に適用していく」と語る。
日本では2026年、暗号資産規制が金融商品取引法(金商法)に移行することが確実視されている。暗号資産は金融商品の枠組みに位置づけられ、伝統的金融(TradFi)の融合が進み、「デジタルアセット・ビッグバン」と呼べる状況が生まれる──私はNADA NEWS編集長として、新年最初の原稿にそう記した。
片山さつき財務大臣が2026年を「デジタル元年」と呼んだことも伝えた。
だが、この捉え方ですら、まだ視線は小さく、狭かったのかもしれない。
もちろん、ホロウィッツ氏の言葉はポジショントークでもある。だが、150億ドルという資金が、こうしたビジョンのもとで動いているという事実は重い。
「NADA NEWS」へのリブランディングにあたり、暗号資産、ブロックチェーン、Web3が持つ意味を今一度、より大きな時間軸と構造の中で捉え直していこう。そう、強く痛感させられた。
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デジタル資産市場の「地図」と「コンパス」を目指して


