●米国関税を巡る最高裁判決を控え、短期的には外部要因主導でボラティリティが高まりやすい局面にある。
●SOPRが1を安定的に上回らない限り、価格変動は損失確定や清算の影響を受けやすく、値動きの持続性は限定的となりやすい。
●イベント通過後に取引所流入の沈静化とSOPRの回復が同時に確認されれば、市場構造は安定方向へ移行する可能性がある。
現在の暗号資産市場は、下落局面からの反発を経た後のレンジ局面に位置している。方向性としては条件付きでやや弱気が優勢だが、明確な下落トレンドが再開したと断定できる段階ではない。重要なのは、短期的な値動きそのものではなく、外部イベント通過後に市場構造が安定へ向かうかどうかを見極めることである。
今後24時間にかけては、米国関税を巡る最高裁判決を含む重要イベントが予定されている。これらは成長見通し、インフレ観測、金融政策期待に同時に影響を与えやすく、短期的にはボラティリティが拡大しやすい。こうした局面では、価格の方向性を予測するよりも、値動きの質が変化しているかどうかを構造データから確認する必要がある。
ボラティリティが安定方向へ向かうかを判断するうえで、まず注視すべき指標がSpent Output Profit Ratio(SOPR)である。SOPRは、実際に動いたコインが利益確定なのか損失確定なのかを示し、市場全体の損益構造を反映する。重要なのは、SOPRが一時的に1を上回るかどうかではなく、その水準で定着するかである。SOPRが1を安定的に上回る場合、価格変動が損失確定主導ではなく、利益確定を伴う需給の中で形成されている可能性が高まり、値動きは次第に落ち着きやすくなる。一方、反発局面でSOPRが1付近にとどまる場合、清算や調整の影響を受けやすく、ボラティリティは高止まりしやすい。
加えて、Exchange Inflow(Total)を見ると、価格が持ち直す場面でも取引所への流入が断続的に観測されている。これは、新規需要が積み上がっているというよりも、売却準備に入るコインが一定数存在していることを意味する。イベント前後でこの傾向が強まる場合、価格変動の主因は需給改善ではなく、リスク回避行動やポジション調整である可能性が高まる。
こうした構造を踏まえると、短期的なボラティリティ拡大局面では、方向性を当てに行く戦略よりも、清算やフロー主導の急変動が起きやすい前提でリスクを管理する姿勢が合理的といえる。特に、価格上昇と同時に取引所流入が増加し、SOPRが1を超えきれない状況では、値動きの持続性は限定的になりやすい。
一方で、反対シナリオとして、イベント通過後に取引所流入が減少し、SOPRが1を上回る水準で安定する動きが確認される場合、市場の損益構造と需給の質が改善し、相場フェーズが次の段階へ移行する可能性は残る。この場合、現在の慎重な見方は見直す必要がある。
現時点では、外部イベントをきっかけとした短期的なボラティリティ拡大と、方向感の定まらないレンジ推移がベースシナリオである。
オンチェーン指標の見方
Spent Output Profit Ratio(SOPR):SOPRは、実際に動いたビットコインが「利益確定」か「損失確定」かを示す指標で、市場全体の損益構造を把握するために使われる。 ・SOPR > 1:利益確定が優勢 ・SOPR < 1:損失確定が優勢 重要なのは一時的な上下ではなく、1を上回る水準で定着するかどうかである。 SOPRが1を安定的に超えると、売りが整理され、価格変動が落ち着きやすい。一方、1付近にとどまる場合、清算や調整主導の荒い値動きが続きやすい。
Exchange Inflow(Total):Exchange Inflow(Total)は、取引所に流入するビットコインの総量を示し、売却準備に入った供給の大きさを測る指標である。 ・流入増加:売却意欲の高まり、ボラティリティ上昇要因 ・流入減少:保有継続意識の強まり、安定化要因 価格が上昇していても流入が増えている場合、その値動きは新規需要ではなく、ポジション調整やリスク回避によって支えられている可能性が高い。 イベント通過後に流入が沈静化するかどうかは、相場が安定フェーズに移行するかを見極める重要な判断材料となる。
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